褥瘡になったら・・・


褥瘡って、「生きている人」しかならないんですって。
それは、ズレ力の影響ってこともあると思うんですけど、
法医学にて、いわゆる検死を行う際には、
数日間、仰向けでいても褥瘡は出来ないんだそうです。
(注意:鵜呑みにはしないで下さいね。)






詳しくは、日本褥瘡学会の今月号の論文に書いてあったので
会員の方は、是非読んでみて下さい。
ちょっと内容が難しくて。。。まだ、はっきりと理解できていませんが、
それでもこの事実って、なんだか感慨深いものを感じたりします。





いわゆる、「壊死」ですもんね。 褥瘡。
それが、生きているからこそ出来るっていうのは
知識の高い方にとっては、周知の事実なのかもしれませんが
僕にとっては新鮮で、なんだか、「生きる」ってことについて
また、考えさせられることとなりました。







褥瘡を通して、褥瘡の怖さについて知ったここ数年。
知れば知るほど、その予防についての大事さを痛感することとなりました。







だからこそ、躍起になって
「こうしなくちゃいけない」 「この方法だとダメだ」 と
病棟のスタッフ、そして患者家族にまで
必死な思いでその「褥瘡対策」に力をいれてきたかと思います。







でも、今だから言えることがあります。
薄々、前から気づいていたり、気をつけなくては! と
日記に書いてきたりもしていましたが、
多分、口だけであったな・・・思うほど。








今、言えること。
それは、「褥瘡対策」でなくて、「相手の生活」を考える事を忘れてはならない。







という、なんとも言葉にしたら当たり前のことで
そんなことは、何を今更! という感じが
あってしょうがないかと思われるかもしれないんですけど
これって、自分が気づいていないだけで
そうは簡単に「褥瘡」を意識しない介入ってのは
難しいものだと思うんですよね。







例えば。







褥瘡が在宅でできました とします。
で、ここでいたずらに「こうしてください」「ああしてください」というのは
そりゃあ、もちろんいけないことかと思うんです。





介護をしていた家族、関わったスタッフに対して
それは「今までの過程」を否定することとになるためかと思うためです。






で、そうさせないためにも
褥瘡になった事の責任というのを、こちら側が意識し
「褥瘡よりも、ADLの方が大事ですから」 と伝え
今、可能であると判断されうる取り組みやすい方法で
かつ、効果的な介入になるよう伝えたりするかと思うんです。







僕は、この方法が「良いこと」であるように思っていました。







が、しかし! 今日、帰り道に改めて考え直してみたんです。
褥瘡ってやはり、良い印象なんかないじゃないですか。
医療従事者でなくても、そのことは知っています。
その上で、
褥瘡になったという事実に対して、何がまず大事なんだろう? と。








褥瘡の評価が出来る事、原因がある程度推論出来ること。
環境面の対応や、ケア方法の変更が提案出来ること。








こんなこと、患者家族や周りのスタッフに見せつけるように披露することなんかじゃない。







脳梗塞や、骨折であっても同じことが言えますよね。
論文には、こう書いてあるからこの練習をしましょう とか、
「この患者さんは、病識が低い。早く身体機能面の介入から生活面に移行したいのに・・・」
だとか。






誰も好きで病気を患らったわけではないじゃないですか。








褥瘡に関しても、いわゆる急性期疾患に関しても
大事なのは「リスク管理」なんかじゃないですよね。








その時に、
どう相手と、そしてその家族と接するのか?
こっちの方が、よっぽど大事なんじゃないかな〜と。







知識や技術って、高ければ高いほど良いと思うんですけど
結構、これらを身につける・身につけていく ってのは
「当たり前」の話でなければならないかと思います。
誰かに見せつけるものじゃあ、ないですよね。







僕は今まで、「この人なら・・・」ってスッと思える先生方に
何人も会ってきました。 とても幸運なことです。
でも、よくよく思い出すと、素晴らしい技術・高い知識はもちろんでしたが
うまく言えないけど、それだけじゃなかった。







価値観っていうか、感性であったり、その哲学や世界観。
相手の気持ちになるって、良く聞くけど
相手の気持ちが仮に分かったとしても、分かっただけじゃいけませんね。
やはり、その次が大事。
言葉の一つ一つ、とても大事だと思います。







褥瘡ができた っていう時。
ポジショニングにしろマットレスの選定にしろ、
相談にきてくださるスタッフがいることは大変ありがたいことですが、
今までの対応の仕方、もう少し考え直して行きたいと思います。








これ、褥瘡だけではありませんね。
セラピスト、そして一人の男として大事なことだと思います。
考え直します! 出直してきます!